初見力 ホームへ戻る
発表会が終われば、次の曲をやって、また次・・・。
そのうち、一ヶ月も経てば、前に弾いた曲は弾けなくなってしまう。そんなこんなで十年が過ぎた。
今まで、完成した曲は20曲あまり。でも今弾けといわれても、ほとんど弾けない。
また、前に弾けた曲だから、少し練習すれば弾けるはずなのになかなかそうは行かない。
もう一度、やろうとすると、まず、楽譜を読んで(これが億劫)、そこへ指が行くようにする。
前にできているので、簡単にそこへいくと思うのに、行かない。これは他の曲を練習
している間に、脳の神経回路が別の曲の動きに合ってしまうからなのか?
そうなると、楽譜さえあれば、いつでもどこでも弾けるという、初見能力をつける以外に
方法が無いのではないのか?
初見の問題は、大人は皆苦労しているといって間違いないとおもう。
まず、他の楽器と違って、基本的に「二段譜」である。ト音記号とヘ音記号がある。上と下で何で
違うところにドがあるのだ?また、和音も音数がやたら多い。調号も頭に入れておかねばならない。
#、♭、ナチュラルなどの臨時記号、繰り返し記号、スラー、<、>、速度記号、等々。様々な情報を
読み取らねばならない。
教師は、「本を音読するのと何も変わらない。」というが・・・・。
ちなみに私は音読は得意なほうだ。小学校のときはいつも先生に当てられて読まされたものだ。
縦読みだろうが、横読みだろうがつかえるようなことは無い。
最初は「音読と同じ」と信じていたが、だんだん疑問が出てきた。
例えばメロディーだけをドレミで歌っていくときは音読と同じかもしれない。
しかし、音読するときに2行ずつ読むことがあるだろうか?和音が多い曲なら、5行ずつ読むようなものだ。
バッハの4声となれば、完全に四つのメロディーになっているそうなので、四つの文章をそれぞれ抑揚をつけて
読まねばならない。さらに、内声は小さい声で読む必要があるという。
また、音読の場合は、あらかじめこの字は濁点をつけるとか決まっていて、例えば「と」が出たら
「ど」と読むなんてことは有り得ない。
読むだけでも、これだけの違いがある。
さらに、音読の場合、われわれは、どこを押したら、「ハ」が発音できるかなどと考える必要は無い。
感覚だけで発音できる。初見の場合は多数の音を読んで鍵盤に正確に指を置くという作業が必要となる。
われわれから言わせるとそれは神業に近い。で、その人は天才なのか?といえば、そんなことはない。
ごく普通の人だ。ずば抜けて運動神経がいいわけでもないし、特に自分と比べて頭がいいとは思わない。
ただ、中学生くらいまでにピアノを始めている。
初見には、われわれ大人から始めた人間にはわからない、何か特別な能力(中学生くらいまでにしか身につかない)
が必要とされると思う。大人が初見能力をつけるには、何か別のアプローチが必要なのではないだろうか。
初見の問題を段階を追って整理してみると
まず、メロディーを読むこと。
これは何とかできる。他の楽器の奏者の話を聞くと、大人から始めても2〜3年で読めるように
なるそうだ。(単に慣れといっている。)ただ、一段譜なので、例えばサックス奏者の場合はヘ音記号を読む必要がない。
次に、二段譜を読むこと。
これは、まず、上下に視野を広くする必要がある。なかなか簡単ではない。通常上下にわたって、一度に目の焦点を
あわせることはできない。またリズムも二段にわたって見なければならない。この段階で大きな壁にぶちあたる。
この問題の解決方法は、まだ見つかっていない。
最後に、鍵盤に指を持っていくこと。
これをしようと思うと、楽譜から目を離して鍵盤を見ることになる。そして鍵盤を見て戻って、楽譜の続きに焦点を
合わさねばならない。これが難しい。楽譜の違うところを見たり、探したりする。そうするともう演奏ができない。
コメツキバッタではだめだ。
ここで登場するのが鍵盤感覚である。(このHPは秀逸です。)
これがないから、あるいは身につきにくいから、コメツキバッタになるのだろう。
これこそが、中学生くらいまでにしか身につかない能力なのではないだろうか。
間違いかも知れないが、大人になってからの視覚障害者は、子供の障害者に比べ、非常に勘が悪いそうだ。
歩き方もぎこちないし、点字を読むことは苦手だそうだ。
そして、これが身につくことによって、コメツキバッタではなくなるし、将来大きなプレゼントが待っている。
曲が進むにつれて、目では追いつかなくなった時、大きな助けになる。
現に、私がやっている(私にとっての)難曲は、目で鍵盤を追っていたら到底弾けない。
この鍵盤感覚を真剣に養ってみようと思っている今日この頃である。
(先日、テレビを見ていたら、隠れ脳梗塞があると、空間認識がうまくいかなくなると言っていた。
ピアノをやりたい人!いまのうちですよ!)
色々書いたが、ここで書いた結論は、子供でも容易に理解できると思う。あるいはそんなことは
とうの昔からわかっている。といわれるかもしれない。
しかし、わかっていることと、できることには雲泥の差がある。(・・・・・ため息)